最優秀賞 吉原 仁美
清水恵美子
関西“被”観光振興プロジェクトへの提案
〜「関西国際空港と関西の活性化」について〜
関西国際空港の開港を「関西」は待望したが、今、両者の間には、確実にある種の“距離感”が存在している。文物が集まり、人やモノ、情報の交流量を増大させた関西国際空港であったが、まちとの関わりにおいては、“独立したクールな運輸インフラ”の域を出ず、人や資源を結び、耕し、創造する主体とはなりえていない。また、ネットワークや、まちづくりへの戦略的活用も十分なされているとはいえない。
失業者の増加、産業構造の転換の遅れ、景気の長期停滞等、混迷を続ける関西は、これまで、魅力ある多様な資源が狭い地域に凝縮されたポテンシャルの高い地域と言われてきた。しかしこのまま、“永遠の高ポテンシャル・エリア”と言われ続けるのかどうか、今まさに試されていると言える。本案では、こうした関西の“潜在力”を“顕在力”に変えていく活性化のポイントを「関西国際空港を活用した“被”観光振興の視点」であると考えた。“被”観光振興とは、観光する人よりも観光される側の主体的な振興を重視するという考え方であり、「“個”を磨き、“まち”を育てるための観光振興」である。とりわけ、「まちの価値創造」「人材育成」「新規起業等のビジネス」等の側面において、関西国際空港は活用不足であり、まちとの間で、もっと踏み込んだ関係性が構築されてもよい。
“被”観光の視点から見直してみると、関西国際空港は、単なる交通の結節点ではなく、西日本で最も国内外の多様な人々との異文化交流が体験でき、国際化時代に関西人の意識の底上げを行うきっかけづくりにつながる場所となる。また、身近な暮らしや文化、風俗などを再発見し、建設的な新しい関係づくりを行う端緒ともなりうる。
ここでは、まちや人々の生活・意識の向上と結びつき、活性化を実現するための“被”観光プロジェクトとして、大学生等による“「関西の歩き方」サイトづくり”をはじめとする7例を具体的に提案している。
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