高石の歩き方報告書≪サマリー≫

                                      2005.4.12

 羽衣国際大学  岡本義温

1.「高石ベイリアの歩き方」の企画の目的

  高石市は、北と東は堺市に、また南は泉大津市と和泉市に隣接し、西は大阪湾に面しています。
 地形はほぼ平坦で、市域は 11.35ku、人口は約62,000人ほどの比較的小さな都市です。

  高石市は、決して知名度の高い観光資源が多い町ではありませんが、私達はこのような古きロマンと近代的なモダンさを
 合わせ持つ小都市「高石」を、中高年女性が『ローカル線で小さな旅』をするという旅のイメージを想定しました。

  高石市のベイエリア地区に点在するお洒落なスポットを巡り歩きながら、堺市へと拡がる浜寺公園へと歩を進め、かすかな
  潮の香 りと歴史のロマンに触れながら、小さいけれども、きっと心なごむすてきな一日の小旅行が実現するのではないか、
  決して大げさな旅行でもない、これからの時代に必要な少しの充実した時間が持てる小さな旅の提案を目指しました。

2.調査の地域

  主として南海本線以西の高石ベイエリア地区、および堺市地域にまたがる浜寺公園近辺

3.調査の方法

  観光、旅行を中心として、文化や歴史などもテーマにしながら、実際のまちを歩き、そのまちの中で生活をし、また仕事をして
  いる人  の声を聞くなどの方法も取り入れながら、対象エリアのフィールドワークによって実地調査を行いました。

4.調査に際しての基本的な考え方

  観光の対象として、あるいは文化的な意味を持つ資源を調査するという学術的な調査をあえて行わず、『ローカル線で小さな
  旅』をするという旅のイメージを想定し、これからの時代に求められる小旅行を企画するための調査ということにコンセプトを絞り
  ました。

  具体的には、もし、大都会から訪問された中高年の女性が好むイメージとスポットはどのようなものなのかを常に強く意識し、
  この地域の日常生活の中にも、ビジターが魅力と感じかもしれない素材を 発掘する視点も考慮した調査に重点を置きました。

  これは、一つの旅の提案ではありますが、今後さまざまな観光政策を行っていく上で、参考になれば幸いです。

5.高石市域の観光資源

  まず調査をはじめるにあたって、高石市役所を訪問し、高石市の観光資源の現状とそれらに対する宣伝・広報の実情などに
  ついて 関係者からのヒアリングを行いました。

  その結果、高石市の行政組織の中には観光客やビジターを誘致するための組織や機関はなく、また、宣伝・広報についても、
  泉北地域の4市1町が加盟する「泉北地域広域行政推進協議会」が発行しているPR用のリーフレット『せんぼく歴史のみち:
  紀州街道・熊野街道』において、高石市に関係する観光資源が紹介されていることが分かりました。

  そこで、私たち調査チームは、そのリーフレットなどで紹介されている観光資源について、これまでとは異なった目線と感覚で
  高石市域を歩きながら、これらの資源を新たな紹介方法とコースプランニングで紹介が出来ないか、を探ることとしました。

  とりあえず、この章では私たちが高石市の既存の観光資源を調査した結果について、それぞれの印象や評価を率直に挙げ、
  それらに検討と分析を加えながら、新しい一つの旅づくりの提案を試みました。

  私たちが提案する試作品ともいえる「モデルコース」は、次のようなコースです。

6.モデルコース: 『ローカル線で行く小さな旅』

  @南海本線の羽衣衣駅で乗り換え、ローカル線(支線)の高師浜線に乗り換え、

  A静かな住宅街の中の高師浜駅で降り立つ。

  Bかすかな潮風の香りを感じながら、まず専称寺を参拝し、

  Cその後、専称寺周辺の歴史ある町並みを散策し、

  D近くの綾井の清水のゆかりに思いをはせながら、

  E再び、高師浜駅近くへ戻り、レストラン「アラキ」、「備」でランチ

  F海岸通り周辺のモダンな町並みを楽しむ、古いお屋敷や近代的な住宅が混在するおしゃれな空間を歩き、

  G喫茶&ギァラリー「海岸通り」で休憩

  H住宅街を抜けると高石漁港、潮の香りと漁船の風情が旅の雰囲気を高めてくれる

  I浜寺公園を南から北へと散策

         【浜寺水路→ロシア兵記念碑→松並木→バラ公園→大久保利通の歌碑「惜松碑」→与謝野晶子歌碑】

  Jショットバー「Jr France」でカクテルを、数時間の散歩の渇きを癒し、

  K浜寺公園駅前の老舗:福栄堂で「松露だんご」のお土産を買う。

  Lローカル線に乗る前に、由緒ある浜寺公園駅(南海本線)に立ち寄り、その芸術的 な美しさと建築の歴史を知り、

  M小さな旅の余韻に抱かれながら、チンチン電車(阪堺線)で帰途に。

7.まとめ(提言に換えて)

  私たち羽衣国際大学の調査チームは、大学が高石市にほど近いところにありながら、地元である高石の観光資源につい
  てはほとんどその内容を理解していなかったのが事実です。観光の研究といえば、日本の有名な観光地や温泉であったり、
  都市観光の拠点である東京の再開発であったり、海外旅行であったりと、あまり足元を見つめなおすことはありませんでした。

  今回、高石ベイエリア地区を調査する機会を得て、まずはリーフレットで紹介されている既存の観光資源の現状を調べまし
  た。そこで抱いた私たちの印象は、人々に地域をアピールする時には、どうしても歴史文化資源の紹介に偏っていることに気
  づきました。

  これまでの観光の姿としては、このような歴史・文化資源を誇らしく見せるだけでビジターの支持を得られることができました
  が、現在の観光には大きな変化がおこっていて、すでにビジターはこれらの観光資源には決して満足せず、新しい観光の形
  を求めています。

  私たちは、この新しい観光の変化を最重要ととらえ、今回の「高石ベイエリアの歩き方」調査研究では、ひとつのテーマをベ
  ースとした旅づくりを提案しました。

  具体的には、この観光の変化を象徴しているいくつかの「トレンド」をあげ、そのトレンドを表現する「キーワード」を組み合わせ
  た「旅」の提案です。つまり、 旅の主人公を「中高年女性」とし、彼女らに「ローカル線」の旅を提供し、日帰りの「ちいさな旅」
  を楽しんでもらおうという、いわば旅ドラマ風の企画です。食べることと買うことという女性の旅には欠かせない要素も取り入れ
  ながら、観光資源でない「魅力資源」を発掘することに努力したつもりです。

  行政も地域住民も高石という地域に誇りを感じ、既存の資源にとらわれることなく、その隠された観光魅力をビジターに訴え
  ながら、これを機会に一人でも多くの人々が「高石ベイエリア」を歩く「おしゃれで小さな旅」を楽しまれるよう関係者の努力が
  続けられることを望みます。

 

←戻る